ビバ★紳士服売り場→
「これ、は……?」
やっと手に入れたネクタイ。しかしどう渡そうかと思いあぐねているうちに、いつものように桜川さんちに寄り、シャワーも浴び、今日中に成し遂げるのはほぼあきらめかけてしまった頃。テーブルの上に見慣れたデパートの細長い包みがあった。風呂上がりの体に汗がにじむ。
「やる」
上着を掛けながら、桜川さんの背が言う。あわてて引っ張り出すと、ブルーの紫陽花。
「お前、いつも同じのしてるだろ」
桜川さんが俺の手からネクタイを取ると、店員と同じ仕草でパジャマの襟に当てた。
「やっぱり似合うな」
満足そうにうなずいて、また背を向けようとする桜川さんの腕を取る。
今、今だ――!
「あの、あの……」
俺は急いで今日一日持ち歩き続けていた物を取り出す。桜川さんが片まゆを上げて、それを見る。
「俺に?」
ぶんぶんとうなずいた。
少しくしゃついた包装から紫の紫陽花が出てくると、桜川さんは、ふっと笑った。
「なにか……?」
今度は不安で冷や汗が出る。
「店員には、こっちを薦められたんだよ」
「あ……」
納得。この柄と色合いを着こなせる男は、そうそういないだろう。
「似合いますよ」
ぎこちない動作でネクタイをかざすと、桜川さんが俺のぬれた頭をくしゃとなでた。