半分の月→
コインランドリーの前で、数人の男子高校生がたむろしていた。堂々と喫煙している。そのまま通り過ぎようとした直樹の前に、1人が立ちはだかる。続いて後ろからも囲まれた。
「金貸して」
にやにやと言われ、ポケットに手を入れ小銭を出す。
「こんだけ?」
新発売のゲームソフトを買った帰りで、釣り銭しか残っていなかった。直樹の手からそれを奪うと、タバコの煙をふーと顔に吹きかける。むせる直樹を見て、皆が笑う。
「吸ってみろよ」
肩を組み、口から出したタバコをくわえさせる。両側の2人に腕を押さえられた。
「ゲホッゲホッ」
苦い香りが口の中に充満し、直樹がせき込む。涙のにじんだ目が、彼らに火をつけた。
「こっちこいよ」
店の明かりの届かない裏道に連れ込まれた。ガシャンと金網に押さえつけられる。声をあげようと開いた口を手でふさがれる。
前髪をかき分け、おびえた表情をさらす。
「その目、誘ってんの?」
周囲で忍び笑いが起こる。
「すげー興奮すんだけど」
これ見よがしに、服の上から自分の前を擦ってみせる。
「マジかよ、お前」
後ろからのぞき込んでくる。
「見てみろよ」
「やべーこいつ女みてー」
「な?」
「んー……んー」
学生服のボタンを外し、Tシャツをたくし上げられた。
「胸はねーな」
乳首をつかまれ、びくっと震える。その反応に、また笑いが起きる。
「たつんじゃねー?」
上ずった声で、横からも手が伸びてくる。震える足の間に、ひざを差し込まれた。
「ん……ん……」
押し当てられ、揺すられる。
「マジ、もちょっと奥入ろうぜ」
「ああ」
金網の裂け目から、工場跡のような敷地に入る。
「なにしてんだよー」
支える手が緩んだすきに逃げようとした直樹を、うれしげに捕まえる。
「ぐっ」
腹にけりを入れられ、うずくまる直樹を地面に押し倒した。
「はなっ……ん……んっ」
「気持ちよくしてやるから、黙ってろよ」
カチャカチャとベルトが外される音が響く。全員が荒い呼吸になっている。
「おい、早くしろよ……」
「わあってるって……」
そのとき、鈍い音と共に、後ろに立っていた1人がドサッと倒れた。
「邪魔」
声と共に、もう1人もけり倒される。
月明かりの中に、相良が立っていた。
「なんだよ、おまえ、関係ねーだろ」
「こっちのセリフなんだよ」
相良は不機嫌に殴り返す。
しばらく抗戦していたが、相良の強さにかなわないと見て取ると、散り散りに逃げていった。追うことはせず、相良はつまらなそうに首を鳴らした。
直樹に目を移すと、乱れた着衣でぼう然とあお向いたまま動かない。
「おいっ」
上からのぞき込むと、両手を伸ばしてすがりついてきた。密着した体から、震えが伝わってくる。相良は舌打ちすると、黙ってその背をなでた。
しばらくそれを続けると、やがて震えがやみ、荒い呼吸も収まってくる。
相良は直樹の肩をつかむと、ゆっくりと体を離した。無表情でこちらを見上げる直樹の唇をふさぐ。いつもと違い、かたくならずに目をつぶり、それを受けとめる。
丸い光が、重なり合う2人の輪郭を照らしだす。舌先がふれ合う。目を閉じたまま、流れ込む月光をこくんと飲み込んだ。
サーと突然の霧雨に包まれる。音もなく髪の毛が額に張り付いた。温かい激情がかき消され、相良はキスを切り上げた。直樹もそろりと立ち上げる。
ぬれながら、コインランドリーまで戻った。
「そこに落ちてた」
相良のバイクに直樹のかばんが積まれている。通りかかったときに見つけ、不審に思い、探し当てたのだろう。
「乗れよ」
直樹が黙って後ろにまたがる。相良のぬれた背に頬をつけた。
顔に打ち付ける雨粒は、冷たくて優しくて、直樹は目を閉じ身を任せた。
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