「なに…やってるんですか」
声が震えた。
大和がいるはずのベッドに竹下がいる。
いや、そうではない。そこに大和もいたから問題なのだ。
仰向けに寝ている大和に重なっていた竹下が、要の声に振り向いた。
「なんでお前がここに?」
気まずそうな竹下をよけて大和をのぞきこむ。
動かない。
眠っているようだ。規則正しい息が聞こえる。
「飲ませたんですね」
散らかった室内を見渡す。大和が酒を飲めないのは知っていたはずだ。
「他の人は?」
「帰った」
竹下がベッドから下りる。
要は無言で大和を見下ろす。
おそらくジュースと偽って飲ませたか。面白がって飲ませてみたら、眠ってしまったので、ベッドに寝かせたか。
だとしても――
「どういうことですか」
大和のシャツのボタンは、すべて外されていた。
「どういうって…着替えさせようかと」
「寝てるのに?」
要の強い口調に、竹下が目を泳がせながら、別のことを言った。
「気になって」
「何が」
「襟元緩めたら痣みたいなのがちらちら見えて、ずっと気になってて、それで…」
視線を大和のはだけた上半身に移す。
胸に、腹に、転々と鬱血したような痕が見えた。
「これ、お前がつけたの?」
竹下が乾いた声で聞いてきた。
要はその言葉を否定する気になれなかった。腹が立っていたからだ。
「……だとしたら、どうだっていうんですか」
竹下の目をまっすぐ見返した。
「マジで?」
「竹下さんこそ、俺が来なかったら、どうするつもりだったんですか」
「そんな、怒るなよ」
竹下が大和のシャツを直そうとするのを、要が制した。
「俺がやります」
「お前ら、マジで付き合ってるの?」
「悪いですか」
要がボタンを留めながら答える。
大和の肌を見られたことが何よりいやだった。自分にしか見えない所に印をつけたつもりだったのに。
「ふーん、水谷は知ってるわけ?」
要の手が止まる。
「知ってますけど、どうしてですか」
「いや、帰るよ」
竹下は、床に置いた鞄をつかむと、部屋を出て行った。
玄関の戸が閉まる音を聞くと、要はフーッと大きく息をついた。力が抜けて、ベッドの脇にひざまずく。
怖かった。
ベッドの2人が見えたとき、最悪の事態を想像してしまった。
大和から、クラスメート数人で集まるという話を聞いたとき、反対すればよかった。友人関係まで疑うのは勘繰り過ぎだと思ったのだ。
だが、竹下は水谷のことを聞いてきた。大和は水谷とできているという噂がたっていたのだった。大和は気にしていなかったが、噂は意外と信じられていたのかもしれない。
だとしたら、男同士だからといって安心していられない。大和を欲望の対象としてみるのは、要だけではないかもしれないということだ。