「あ、鉄郎」
道で鉄也に手を引かれて歩いていた篠原が、俺を見つけて、悪びれもせず手を振ってくる。
「鉄也から、鉄郎は遅れてくるって聞いたから、先店向かってるとこ」
そんなの聞いていない俺は、夕飯を買いに出たところだった。鉄也を見ると、そ知らぬ顔でとぼけている。
「用事済んだんで、俺も一緒に行くよ」
にっこり笑ってやった。
「一応、3人で予約取ってるんだな」
席に案内されながら、鉄也に嫌味を言う。俺は用事が長引いて来れなくなる設定だから、当然か。
おしゃれっぽいイタリアンで、篠原の今日のスタイルがハーフパンツとサンダルでなかっただけ、ぎりぎりセーフと言える……かどうか。鉄也は一見ラフな感じのジーンズ姿だったが、実はそれが勝負服であることを俺は知っている。
俺の弟だからって、仮にもねらわれている身でありながら、なぜこうも簡単に信用するのか。付いて行く前に、俺に確認を入れてもいいだろう。もし鉄也が嘘を言っていなかったとしても、そうして見せることで牽制になる。俺は篠原の警戒心の薄さにいらだっていた。道で会ったときも、手を取られて、肩も抱かれんばかりの勢いだった。俺と偶然行き会わなかったら、どうなっていたか。
その先を考えたくなくて、俺はパスタを口に運んだ。腹立たしいがうまい。篠原もうまそうに食っている。はしの使い方は下手だが、パスタは器用に巻き取る。なんだか楽しそうだ。俺はワインをがぶ飲みする。これも喉越しがよかった。
篠原がトイレに立った後、テーブルの下で、鉄也の足を軽くける。鉄也は「失敗」とでも言いたげに、笑ってごまかした。
「こんなおしゃれな店で喜ぶとでも?」
女じゃないんだから。俺は馬鹿にした口調で聞く。
「いや……ここはジェラートがうまいから……」
篠原を分かってるじゃねーか。
俺はそのまま席を立つと、トイレに向かった。
篠原はちょうど手を洗い終わったところだった。無言で引っ張り個室に戻す。かぎをかけ、キスもせずに篠原のズボンを下ろした。
「鉄郎……」
下着も下ろし、指で慣らしにかかる俺に、篠原が焦る。
「やめろって」
抵抗する篠原の手首を持って壁に押さえつける。
「帰ってから……」
「待てない」
却下すると、Tシャツをたくし上げる。
「んふ……」
乳首を口に含むと、息が漏れた。
ドアがノックされる。無視していると、小さく声をかけられる。
「兄ちゃん、まずいって」
鉄也が手洗いで声を潜めている。篠原がうかがうように、俺を見た。
「声聞かせてやれよ」
俺は篠原を握りこんだ。
「何やってんだよ、後にしろよ」
鉄也の抗議が聞こえるが、篠原はうつむいて、俺の動きを追っていた。
抵抗されないことに安心して、俺は篠原から手を離した。
「今戻る」
ドアに向かってささやくと、篠原が服を直すのを待って、かぎを開けた。
洗面所を出た所で待っていた鉄也が、篠原に「大丈夫?」と声をかける。表情に動揺は隠せなかったが、ぎこちなく笑って応えていた。
そんなムードではなくなってしまったため、デザートはキャンセルして店を出る。
「お前、先帰ってろ」
鉄也に言うと、心配そうに篠原を見る。篠原が笑顔で手を振ると、鉄也は一人家へと向かった。
不機嫌のオーラを発しながら歩く俺の後ろを、篠原がそっとついてくる。
かなり歩いた先のコンビニに入り、アイスキャンデーを買うと、近くの歩道橋に登った。
対になっているアイスを半分に割り、片方を篠原に渡す。へへっとうれしそうに笑って受け取った。
手すりにもたれて、下を通る車のライトを眺めながら、2人でいるということは、1人ではできないことをするということだ、と思った。思い通りにいかなくていらだったり、欲しくもないアイスをなめてみたり。
「それ、うまい?」
篠原はうなずくと、食べかけのアイスを俺に差し出した。かみつきながら、俺のは篠原の口に入れる。
「バカみてー」
同じ味のアイスを食べさせあっている。
夏の夜風に溶け出した甘い汁を追っているうちに、いつしか互いの唇に行き着いていた。
排気ガスまみれのこの街では、いつも誰かとつながりあっている。誰かの排気を吸いながら、さっきコンビニで流れてたダサいCMソングを頭の中のBGMに、キスをする。完全な静寂と闇が訪れることのない夜に、俺たちはわずかにつながった。
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勢いだけのエロ(18禁)